坂口光洋記念講座は、慶應義塾大学医学部の卒業生である、故坂口光洋先生が寄贈された慶應義塾医学振興基金の事業として、1995年に設立されたものです。2018年11月より新しい講座として、オルガノイド医学講座が新設されました。

 オルガノイドとは、生体組織をその性質を保持したまま、体外で3次元的に培養できる技術です。オルガノイド医学講座では、オルガノイド技術を利用し、主にヒトの組織生物学および疾患生物学を推進致します。具体的には、以下の2つの目標を置いております。
1) 正常な上皮組織が遺伝子異常とともに、腫瘍へと悪性化していく過程を生物学的に解釈することを目指します。
2) 腸管などの上皮組織から作成したオルガノイドを用いて、様々な疾患に対する再生医療の開発を行います。

 これまでの医学生物学は分子、遺伝子、細胞、個体のレベルでの研究が進められてきました。しかし、多くの疾患は細胞同士のコミュニケーションの異常に端を発するため、多細胞集団の動態を研究することが必要になります。オルガノイドは従来の研究手法の穴となっていた多細胞生物学の強力なツールとなることが期待されています。

 医学の進歩は新しい技術によって成し遂げられてきました。本講座はオルガノイド技術を用いて本質的なヒト疾患原因を究明し、”技術”を”医学”に昇華することを目指します。